~脳活性化リハビリテーション~
おさらいですが,認知症は神経系の変性疾患などにより生じる,神経ネットワークが崩壊していく病気です.しかし,脳には必要な能力を回復する力があるため,適切なリハビリテーションやケアにより軽度の認知症であれば回復する可能性もあります.また,逆に誤った対応や廃用が続くと認知症は急速に進行します.出来るだけ早い段階で「崩壊>回復」の状態から「崩壊<回復」の状態に変えようというのが脳活性化リハビリテーションのコンセプトです.
では,脳活性化とは何でしょうか.ズバリ,それは認知症患者個々に合わせた適切な刺激(快刺激)を脳に届けることです.学生時代にお世話になった先生からは,「前向きに楽しく頭と身体を使って人と交わる」ことであれば基本的には何でもよい,と教わりました.
そこで,自分は理学療法士なので身体活動を組み込んだプログラムを考える訳です.身体活動には,①覚醒レベルを上げる,②記憶力を高める,③アルツハイマー病の脳病変を軽減する,④老化の原因となる活性酸素の毒性から神経細胞を守る,といった効果が期待されます.
さて上の写真ですが,何をしているか分かりますか?
(分かった方は,まずいないと思いますが…)これは懐かしのYMCAを高齢者の方たちと行っているところです.手前のケーシー後姿が10年位前の自分ですが,見て下さい,この体操選手ばりに指先まで伸ばされたYのポーズ!そう,全力でやっているんです.なぜなら一緒に行っている皆さんが笑ってくれるから.見てもらえないのが残念ですが,写真に写っている皆さんは本当にイイ笑顔をしています.
そして,もう一つ.自分は必ず「○○さん,今のポーズ最高ですね」とか,「△△さんのターンはキレッキレッでしたね」というように対象者を名指しで,オーバーなくらい褒めるようにしています.褒められる快刺激により脳ではドパミンが多量に放出され,それが意欲につながるからです.
また,アルツハイマー病患者では快か不快の判断で治療への協力が決まる傾向があり,くわえて周囲と過同調する心理特性があるとも言われているので,小グループでの楽しい身体活動は有効だと思われます.
しかし,脳活性化リハビリテーションだけで認知症が改善する訳ではありません.医療だけではなく周囲のケアを含めた包括的な関わりの中で,認知症であっても笑顔でその人らしく過ごせる環境作りの一つとして脳活性化リハビリテーションを行っています.
記事担当:理学療法士 山本晋史