リハビリは、結局は「自分で」するものです。しかし、病気で障害を負うと、身体だけでなく心も傷つきます。
心や体が傷ついた患者さんから、どうやって主体性を引き出すのか?これは、リハビリに関わる私たち専門職にとって、重要なテーマです。
私たちは、努力を仕向けるわけでなく、何でも手を添えて介助するわけでもありません。
患者さん本人が「やる気」になるよう考えながら、じっくり待ち、共に歩む姿勢が必要と考えます。
患者さんが自分で目標を見つけ努力できるようになるまで、機能を高めるリハビリだけでなく、生活能力や周囲の環境を整え、患者さんの「居場所」や「出番」を作りながら、少しずつ主体性を引き出すよう関わる、すなわち目標が「持てる」ようになるための支援を行います。
そして、自ら目標ができたら、今度はその目標が「実現できる」よう支援していきます。
ある病院では、「退院3ヶ月後の生活目標」を、入院2週間後のカンファレンスで設定することにしているそうです。全患者さんに対して目標を設定するようにしたそうです。
(当院ではできていないというのは痛いところですが、目標にしたいものです。)
これはやってみると、なかなか難しいそうで、入院中であれば、「トイレ動作の自立」、「杖歩行が○m可能」といったような動作に関する目標になることが多いのですが、「生活の目標」となると、その人の身体の状態だけでなく、生活歴、家族や家屋を含めた生活環境等の社会的情報を十分に把握しておかなければ立案できません。
スタッフの立てた退院後の目標を見ると、入院中のものと変わらないような目標もあるようですが、「国道の横断歩道を信号が変わらないうちに渡る」、「畑の草むしりができる」、「妻と一緒にプールを歩く」、「孫と一緒に散歩をする」、というような、その人ならではの目標を立てているケースも増えてきているそうです。
退院後の生活目標は、生活期のスタッフとの情報交換の道具としても役立ちます。
地域のケアマネージャーや生活期スタッフと合同で行うカンファレンスでは、回復期スタッフと生活期スタッフの間の共通言語が少ないため、相互理解が不十分で、退院後の生活を想定した入院リハビリができていないという意見が聞かれるなどの課題がありました。
しかし、具体的な「退院後の生活目標」があることで、それをキーワードにして、患者さんの医学的状況やADL、社会的背景を含めた情報交換ができるようになり、カンファレンス(担当者間の会議)も効率的で有意義なものになったそうです。
患者さんが主役のリハビリテーションでは、「失われた機能が完全に元通りに回復するとは限らない」こと、「障がいと共にありながら、積極的に社会参加を行うことが出来る力を身につけ、自分らしさを取り戻し、自立した生活を送ることこそ、最も大切な目標であると思います。
リハビリというのは誰かにしてもらうことではなく、自らのために自ら行うものです。
関わるみなさんの意識が変わることも、大切なことなのだと思います。
記事担当:さかもと