群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

回復期リハ病棟156床。ロボットリハ稼働中。100名超のリハスタッフで365日リハビリ邁進中。一緒にリハビリがんばりましょう。

「リハビリの視点から~人工股関節全置換術を予定する方へ~術後の筋力について」

“人工股関節全置換術を予定する方へ、リハビリの視点から”シリーズ第五弾

 

術後の筋力はTHA後、最も変化を実感し、動きに影響を与える部分であります。

 

“痛くて力が出ない”と感じていたところから、痛くないけど筋力の左右差を指摘される。

 

およその目安ですが、股関節周囲の筋力、は術後6週でやっと手術する前の筋力に達するとされています。

 

「じゃあ6週すれば普通の筋力にもどるのね?」と思うところですが、

手術前の筋力と言っても、股関節症の場合、手術が決まる頃には、痛みも強く、力も落ちた状態にあります。その筋力に達したといっても十分とは言えません。

 

筋力はもっと長丁場で考える必要があります。

 

とりあえず考えてみましょう。

 

生活上支障ないくらいの歩きができれば良い?

旅行や、お出かけも目指したい?

趣味のスポーツに参加したい?

 

こういった風に、何が目標かで必要な機能が異なってきます。

 

どのくらい入院したらよいのか?

 

およそ平均すると、手術から2週間ほどで当院へ来て、そこから1ヶ月前後の入院、すなわち手術から5~7週ほどの入院の方が多いという様子です。

 

当院入院1ヶ月での到達レベルは、これもおよそですが、リハビリでは杖なくとも外も歩ける、屋内は、1本杖でスタスタ歩ける。生活は全て自力で行える。といった状態です。

 

これなら退院して生活しても支障のない状態です。実際には、当院入院時の状態に開きがあるのと、年齢や手術までの状態などでもう少し時間を要する場合があります。

 

そして、先に書いたように、何を目標とするかでリハビリの達成が異なってきます。

 

筋力は、時間経過で回復する部分でもあるため、頑張ったら頑張っただけ短期間で改善するというものでもありません。

 

筋力強化の方法、自身の筋力の特徴を学ぶ期間として入院期間を考えるくらいの気持ちで大丈夫です。

 

 

あるTHA術後患者さんの4ヶ月間の股関節の外側にある中殿筋という筋肉の力を追ったグラフです。

 

研究を目的に退院後も計測し、情報の使用に承諾を得ております。

 

数値は筋力をN(ニュートンという単位)をその時々の体重で割った数字(N/kg)です。筋力には体格差が関係するため、体重で割ることで、純粋に筋力の変化を比べられるようになります。

 

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手術から2ヶ月程ではまだ筋力の向上は乏しい状態でした。

2ヶ月経過したところから向上していきます。

筋力は1年経過するまで伸び続けました。

 

この方は重症な方でした。やっと歩ける状態で、筋力の回復に時間を要する状態でした。

通常の場合、もっと早くに筋力向上の変化が現れます。

退院後にはもとの仕事にも復帰され、杖なく歩行が可能となりました。

重症な場合ほど、リハビリが大事となります。

本来、このような長期に渡って筋力を計測する機会はないため、セラピストも患者さんも筋力の変化の実際は分かりにくいものです。

この結果から言えることは、筋力は、短期間で頑張ったからその分たくさん上がるという訳にはいかず、時間をかけながら回復していく傾向があるということです。

焦ってもダメということです。

 

まずは生活も戻ることを目指し、長期的にやりたい目標を見つけ、そこに向かう活動的生活を開始する。そのために準備期間と準備の仕方が当院でのリハビリの役割と考えます。必ずしも入院期間は長期を考える必要はなく、自身の身体について知り、身体との向き合い方と学ぶ時期と考えて頂ければ、リハビリのための入院というハードルは下がるのではないでしょうか。

「ついていけるかしら・・・」と不安になる必要はなく、目指す先を共有し歩んでいくのがリハビリですからご安心ください。

 

次回は、歩行速度についてです。速度は歩行能力です。どれだけの速さで歩けるか、これはどんな生活が送れるかに繋がります。

 

では、しばしお待ちを。

 

 

                          記事担当:PT山﨑

【退院後のケアも大切です!!】

こんにちは!

秋も深まり、沢渡は徐々に寒さが増してきました。

体調管理に気を付け、風邪を引かないようにしたいですね(^^)

 

さて、今回は退院後のケアについてのお話しをしたいと思います。

 

当院を退院され、生活の場に戻った際、リハビリで培った筋力や動作能力を維持・向上させることが重要となります。

しかし、お一人で行う場合、どのように行ってよいか正しい運動方法が分からず、不安だと推察します。

 

 

そこで、当院では退院後のケアとして、ご自宅で行える自主練習の資料を患者さんに配布し、筋力の維持・向上に努めて頂いております。

 

ここで1例を紹介したいと思います。

 

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自主練習の資料として紙面でまとめたものを、実際のリハビリ時間に指導させて頂き、入院中に自主練習が行えるようにしています。

 

そうすることで疑問点や不安な点を一緒に解決していくことができますね★

 

退院後は生活の場が最優先となるため、自主練習はなるべく複雑なものではなく、簡単に行えるよう工夫することが大切だと私は考えています(>_<)。

ここはセラピストの腕の見せ所です★

リハビリと同じで長く続けていけるよう、患者さんの生活を考えた方法をお伝えできればいいなぁと考えています★

 

                         記事担当:PTおおの

変形性関節症のウォーキング

変形性股関節症や変形性膝関節症などの疾患には

 

ウォーキングなどの有酸素運動が有効と言われています。

 

少なくとも30分、週3~4回とアメリカ老年医学会も推奨しています。

 

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 しかし、こういった疾患をもつ方はウォーキングで脚の痛みを訴えます。

 

調べると、膝の関節に掛かる力が、歩行開始30分から増加するとのこと。

 

 そこで、連続歩行と間欠歩行を比較しました。

          

 痛みの変化に目を向けると、連続歩行では15分ごとに痛みが増加していき、間欠歩行(インターバル歩行)では痛みが増加することはなかったとのことです。

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 15分以内のウォーキングを数回繰り返すと、関節に掛かる負担や、痛みが少なく有酸素運動ができそうですね。

 

                            記事:さかもと

勇気の言葉

病気になりたいと願って病気になり、入院する人はいらっしゃいません。

逆に「何で自分が病気になってしまったのか…」と嘆いている方が多いことでしょう。

 

私が担当した患者さんに

「ここに来たときは本当に絶望しか無くてこれからどうなるのかって思ってた。

それを精神面でも支えてくれて…自分の苦手を気付かせてくれて…

やる気を出させてくれて…良くしてくれて…

本当にあなたが担当で良かった。感謝しているよ。」

とおっしゃっていただきました。

 

この仕事をしていると、本当に色々な方と出会いますが、このような言葉には

言語聴覚士という仕事を選んでよかったな」とやりがいと勇気をいただきます。

患者さんはセラピストを選べません。もちろんセラピスト側も、

その時点のさまざまな要因や仕事量から

リーダーが担当者を決めていますので、担当者が患者さんを選ぶわけではないのです。

 

患者さんから直接いただいた感謝の言葉を胸に、

これからも患者さんに「こんな人が担当か…」ではなく、

「この人が担当で良かった」と思っていただけるような

言語聴覚士でありたいと強く思います。

 

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                          記事担当:ST田村

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自分に合った杖の使い方

こんにちは!

先日、リハビリ中に患者様からこんな事を言われました。

「こんなに杖があったら、どれが良いか選べないよ!!!」

 

確かにごもっともです。

一言で杖といっても

実は使い方、歩き方によって選定が必要で

色々な種類があるのです!

 

そこで今回は「杖について」ということで、

まずは当院にある杖たちを紹介します!!!

 

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左から、T字杖 、ロフストランド杖、四点杖、サイドケインです。

(杖は木製で茶色のイメージがあるかと思いますが、カラーバリエーションも沢山あります!)

 

これらの杖は形状によって、大まかに

一本杖(T字杖、ロフストランド杖)と

多脚杖(四点杖、サイドケイン)に分類されます。

 

紹介は以上で、やっと本題です。

患者さんから言われた「どれを選ぶか」について、

バランス能力にも左右されますが、どんな歩き方をしているかで選ぶことが出来ます。

 

歩き方は大きく分けて、2動作歩行か3動作歩行です。

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杖と反対の足→同側の足 の順で足を出します。

この場合は、一本杖(T字杖、ロフストランド杖)の方が歩きやすくなります。

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杖→反対の足→同側の足 の順で足を出します。

この場合は、多脚杖(四点杖、サイドケイン)の方が歩きやすくなります。

 

3動作歩行の場合は2動作歩行に比べ、杖にかかる体重が多くなるため、

支持脚が多い方が良いということになります。

 

あくまで、臨床での判断基準の1つなので、絶対にというわけではありません。

 

<ちなみに・・・>

杖の高さは

・腕を垂直に下ろしたときの手首の高さにグリップがくる

・身体の縦の線と曲げた腕の角度が30度になる

が、望ましいと言われています。

 

今回は杖に焦点を当てましたが、それ以外の歩行補助具もたくさんあるので

また紹介出来たらと思います!

 

今回は以上です!ありがとうございました!

                          記事担当:PT小竹

『新しい生活スタイル』

 「新しい生活様式」や「ステイホーム」が提唱されている中で、作業療法士として自宅での生活、活動や参加に対しての考え方の見直しが必要となっております。

 現にこの数ヶ月で要支援の認定を受けている人が急増しているという話も出ています。

 通いの場の減少あるいは縮小開催、イベントの相次ぐ中止などにより、人との交流が減少し外出機会が減り活動量が低下する等厳しい環境下におかれていることは確かです。

 

 そこで私達リハビリ職に求められるのは新しい生活様式をいかに健康に乗り切れるかではないかと思います。各自治体や福祉関係者の中では既に取り組みを始めている話しも耳にします。今求められるのは対応力かもしれません。

 

 自分がコロナ禍で新しく始めたことがあります。庭の片隅で『家庭菜園』をしています。少し前ですが立派なキュウリが取れたので、味噌を付けていただきました。

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 道具を使用や中腰での作業による腕足腰の筋力強化、土の上を歩く事でのバランス能力の向上、日光に当たることでのストレス解消、何より収穫出来たことの達成感や取れた野菜を配る等の他者との繋がり、食べる楽しみがある事が自分の中で一番の楽しみとなっています。

 

 自分達の食を支えることも大切ですし、健康で過ごすために今この状況で出来る事を考えまた発信していくことも大切かと思います。

 お財布事情にもちょっぴりやさしい家庭菜園、これを機に始めてみてはいかがでしょうか?

 

                          記事担当:OT山口

           

 

自分でやりたい!!の支援

  こんにちは!最近はだいぶ秋めいて過ごしやすい季節になってきましたね。

 沢渡の紅葉が楽しみです。

 

 さて、今回は先日患者さんに作成した自助具を紹介します!

 

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      「自分で湿布貼り」 と  「片手用爪切り」 です。

 この自助具を使えば、背中等、手の届かない所にも自分で湿布を貼ることができます!

 また、爪切りは完全に片手のみで使用可能です。

 

 患者さんの日頃の様子をみていると、「食事やトイレ等、生きていく為に欠かせない事は頼む事はしょうがない事もあるけど…爪くらいは自分が我慢すればいいから…」とあまり自ら訴えない事が多いです。多分、それは家に帰っても、家族に対しても出来るだけ自分に手をかけて欲しくないと思うのではないでしょうか。

 

 出来るだけ患者さんの自立心を大切にサポート出来るように、今後もひとりひとりに合わせた自助具を作成していきたいと思います!

 

 皆様も気候の変化で体調を崩さないよう、皆さんもお身体をご自愛くださいね。

 

                              OT五十嵐

リハビリテーション総合実施計画書の意義

 リハビリテーション総合実施計画書は疾患別リハビリを施行するための前提になる書類です。

 リハビリを実施している患者さんにチームで協力して月1回作成し、説明を行っています。

 内容はリハビリテーションカンファレンスで共有した患者の全体像と目標、達成のための介入計画をこの書類に起こし医師が総括して、現状と今後の方針について患者・家族に説明を行います。

 

 特に退院時の活動の目標については、各項目の自立度を具体的に説明する必要がありますし、環境調整や外出・外泊訓練、家族の協力等もリハビリ計画の一部であることを伝える必要もあります。

 

 説明の際には、計画に対する患者・家族の理解度と意向を確認し、理解不十分だった場合や意向のずれ等があった場合は、速やかにカンファレンスを開催し、解決策の検討が大切です。

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 この中にある概念にはインフォームドコンセントに患者との協業を合わせたものが利用されています。これは基本的に、患者さんの自己決定権を尊重します。これは患者さんを治療やリハビリテーションの対象ではなく、その主体として認めることを意味しています。

 

 この考え方は急性疾患主流の時代に形づくられた“パターナリズム”や“患者に善を施すことを、患者の意思を問うことなく行うこと”の批判から生まれています。

 “パターナリズム”の語源はラテン語の「父」(pater)で、家父長が自ら決めた方針を最善のものとして家族に押しつける封建社会を転用し、古い医学における医師のありかたに批判が込められたものです。

 

 しかし、この自己決定権の尊重は簡単にできるものではありません。まず説明を聞いて、すこし違うと思うところは自分の意見を述べておくと、次の計画書に反映できるかもしれません。意思決定の共有も大事でしょう。

 

           
           シナリオを立てましょう! | 株の学校カブックス

 

 このリハ総合実施計画書。説明をされるのも、サインをするのも大変だと思いますが、医師が言うことを仕方なく受け入れるのではなく、自分が何をしたいのか少しでも言えると、良いリハビリができるのだろうと思います。

 

 リハビリによって、すべてのADLが自立出来ると良いですが、そうとは限りません。

 すべて出来るとは限らない以上、力を入れるべきは患者さん毎に違いがあります。その点を指摘していただき、個別性が高く、ニーズの高いリハビリをして行きたいと思います。

 スミマセン文章が拙くて申し訳ありません。後日修正もあるかもしれません。

                          記事担当:さかもと

 

実績指数

 回復期リハ病棟で行ったリハビリの結果、ADLがどのくらい短期間で改善したかを示す指数である実績指数。

 

 回復期リハ病棟入院料1を維持していくためには、40という高い目標が設定されています。

 

 ただ、この数字は高ければ良いというものではなく、ある程度の数値であれば良いと考えています。なぜなら、ADLの改善途中で退院を決めて、自宅退院にしてしまえば、この数値はぐんぐん伸びます。こうすれば実績指数60,70というのも目にすることができるでしょう。

 

 当院はどうすれば在宅へのソフトランディングを果たせるか模索します。歩けるようになったからといって即退院とはしません。

 自宅復帰が出来る環境にあるのか、しっかり吟味して、地域の医療従事者等に相談して、自宅復帰を行います。

 

 こうすると、実績指数はそう高くはなりません。なので、このくらいの数値が適性かなと考えています。

 

         リハビリテーションの成果 - 千里リハビリテーション病院

 

 その実績指数は47.8です。4月~9月までの半年間、258例中184例の結果です。

 ちなみに、

 脳血管 56.2  運動器 40.4  廃用症候群 39.6  でした。

 

 基本的にリハビリの対象であれば、受入をお断りしない当院。それにもかかわらず、この結果は立派だと思っていますが、独り言なので気にしないでください・・・。

 

                        記事担当:部長さかもと

回復期リハ病棟の臨床指標2020年9月版

 臨床指標(クリニカル・インディケーター)を表していますが、診療の質を評価する指標です。

 指標を経時的に測定し、評価することで医療の質改善と向上につながると言われています。

 

 今回も、回復期リハ病棟3棟まとめて、臨床指標を示して行きます。

 

 まずは重症者回復率です。

 

 基準は日常生活機能評価で10点以上の重症者を4点改善することです。

 

 診療報酬の基準では3割以上改善がみられる事が求められていますが、2/3近い患者さんが、4点以上改善しています。

 

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 次は在宅復帰率です。

 

 上と同じく、6ヶ月間の実績をまとめて数値化しています。

 

 7割以上が診療報酬の基準ですが、8割を超えた結果になっています。

 

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 最後に重症者受け入れ割合です。

 

 軽症な患者さんばかりを入院させると、ADLを自立して自宅復帰がしやすくなりますので、ある程度、重症な患者さんも受け入れることが義務づけられています。

 

 それが、重症者受入率です。

 

 これは診療報酬上3割を超えることが求められていますが、これも大きく上回る結果が出ています。

 

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 軽症か重症かで言えば、半数近くの方が重症と判定されています。

 

 よって、軽症患者さんの受け入れも出来ますので、是非ご利用いただければと思います。

 

 これは、4月~9月までの結果です。最新の結果ですので入院の際の参考にご利用ください。

 

                        記事担当:部長さかもと