「廃用症候群」は、別名生活不活発病ともいわれます。医学的にはこの用語を使っていますので、これに倣いますが、病気やケガなどで身体を動かせない状態が続き、過度の安静や日常生活の不活発に伴って生じる身体的・精神的諸症状のことをいいます。身体を過度に動かさないこと(不動、低運動、臥床など)により生じる二次的障害です。
廃用症候群の症候は、筋骨格系、循環・呼吸器系、内分泌・代謝系、精神神経系などさまざまな臓器の症状として現れ、日常生活自立度を低下させます。
身体の活動には、不活動状態が長期化すると、さまざまな臓器の機能低下の悪循環が生じます。廃用症候群が廃用症候群を悪化させ、寝たきりを起こす原因になります。
廃用症候群の症状にはこんなものがあります。
不活動状態によりこういう症状が出ると、そこから抜け出すのにはかなり大変な思いをします。
回復期リハ病棟には、廃用症候群を呈した患者さんも入院することができます。
実際には肺炎治療後の廃用症候群であるとか、開腹手術後の廃用症候群などで入院されていますが、こういった疾患の患者さんが当院の回復期リハ病棟全体の一割未満を占めています。
廃用症候群はリハビリの効果が上がりにくいと言われるので、今年度2月退院までの患者さんで検証してみました。
実績指数だけを調査しましたが、黒いグラフが全員を入れて実績指数を算出したもの、青いグラフは実績指数の計算から除外すると宣言した患者さんの結果だけを集めて算出したもの、赤いグラフは除外者を外した本来の実績指数を表しています。
除外者を外す前の実績は25前後と低いですが、除外者の選定が適切にできており、除外後の実績は40を超えています。対象者の四割くらいが除外になっていましたので、廃用症候群の患者さんは、予後予測が比較的簡単にできるといえるでしょう。
比較対象として整形疾患(人工関節置換を除く)の患者さんの実績をご紹介します。
やはり、整形疾患の方が廃用と比べ日常生活活動の利得は高くなるためか、黒いグラフ(全体)の数字は高くなっています。
また、効果が低い患者さんも明確には決められないためか、青の除外患者の実績指数は廃用症候群の患者さんの数値よりも高くなっています。
しかし、除外者を抜いた実績指数(赤)では、40を超えることができました。
病院によっては算定除外する患者さんを決めず、入院患者さん全員で指数を算出し基準をクリアしているところもありますが、これでは良くならない患者さんを回復期リハ病棟に入院させる事は難しくなります。
当院では、たとえ良くならなかったとしても、入院してリハビリを受ける機会を多くの患者さんに持っていただけるように、この実績指数除外という診療報酬の制度を活用しています。
多くの患者さんに回復期リハビリの機会を増やすため、今後も努力していきます。
記事:部長さかもと