群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

回復期リハ病棟156床。ロボットリハ稼働中。100名超のリハスタッフで365日リハビリ邁進中。一緒にリハビリがんばりましょう。

歩行速度と寿命と歩くヒント

 欧米では、成人や高齢者を10年以上追跡した大規模な研究が多く報告されています。

 歩く速さが寿命に大きく関係しているという内容です。

 

 歩く速さは、人それぞれのペースがありますが、65歳以上30000人、21年間の追跡調査をしました。

 

 歩行速度1.6m/secの人の平均寿命は95歳以上、0.8m/secの人は約80歳、0.2 m/secの人は約74歳でした。

 

 歩行速度を基にして余命を計算することもできます。

 

 イギリスで行われた研究でも、歩行速度が速いと自己申告した男性の推定寿命は85.2~86.8歳であり、女性は86.7~87.8歳でした。

 また、歩行速度が遅いと自己申告した男性の推定寿命は64.8歳、女性は72.4歳でした。

 肥満度や握力よりも歩行速度の方がより寿命に関係しているようです。

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 歩く速さが寿命と関係するのはどうしてでしょうか。二足歩行は実はかなり複雑な行動です。二足歩行ロボットの開発が近年までできなかったことからも想像できると思います。関節を曲げたり、蹴り出したり、左右のバランスをとったりなどの動作が協調しなければできません。筋肉、骨、神経、呼吸器、心血管系などが正常動いてこそ速く、効率的な歩行ができます。

 

 歩行速度が遅くなる、頑張っても速く歩けないのは、体のどこかの異常でスムーズな運動連鎖が行えていないこともあります。つまり速く歩ける人は、心血管の疾患や糖尿病などの重大な病気もなく健康な状態にあるといえそうです。

 また、人間には脚に大きな筋肉があります。筋肉が伸び縮みすると周囲の血管も伸び縮みします。血液を流すポンプとしても重要な働きを担っています。

それだけエネルギーを必要とするので、歩行による有酸素運動代謝機能を活発にし、肥満の抑制もできます。

 

 歩行速度1.0m/sec(3.6 km/h)とはどのくらいのスピードでしょうか。

わかりやすい例では、歩行者用信号機です。

横断歩道を青信号の間に安全に渡り切れる速さが1.0m/secとされています。

また、不動産広告で見られる「駅徒歩○分」は、「道路距離80mを歩くのに要する時間を1分とする」という規定にのっとっています。つまり80m毎分=秒速1.33m毎秒です。これより速く歩ける身体能力を持っていると、長生きできる可能性も高いでしょう。

 

 一つだけ、速く歩くヒントを。

 ふくらはぎの筋肉を鍛えていただきたい。

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 椅子や手すりにつかまって、踵を挙げます。

 慣れないうちは両足で、慣れてきたら片脚ずつ。

 20回程度、大きくゆっくりできると良いでしょう。

 

 ではなぜふくらはぎを鍛えると良いのでしょうか。

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 以前、歩行は上下の重心移動を伴うというお話しをしたことがあると思います。

 片脚で立っている際に、重心は高くなり、両脚で立っているときに重心は下がっています。

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 両足で床に足が着いている際に、上の図のようにいわゆるベタ足では重心位置が低くなりすぎてしまい、片脚で支える時までに、重心位置を持ち上げなくてはなりません。

 この重心の上下動が大きいと、前方への推進力も失われることになります。

 

 従って、重心が落ちすぎないように、後ろ足が床から離れる際には、踵が床から離れるように、地面を蹴り出してあげましょう。

 

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 歩行速度低下の原因は、他にいくつかありますが、

 サルコペニアやフレイルでは、このような理由が原因の多くを占めます。

 

 指わっかテストなどで、ふくらはぎが細くなりすぎていないか注意してくださいね。

 

脱字があったため、赤字部分を修正しました(8/20)

 

                        記事担当:部長さかもと