群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

回復期リハ病棟156床。ロボットリハ稼働中。100名超のリハスタッフで365日リハビリ邁進中。一緒にリハビリがんばりましょう。

認知症の話(3)

~脳活性化リハビリテーション

 

 おさらいですが,認知症は神経系の変性疾患などにより生じる,神経ネットワークが崩壊していく病気です.しかし,脳には必要な能力を回復する力があるため,適切なリハビリテーションやケアにより軽度の認知症であれば回復する可能性もあります.また,逆に誤った対応や廃用が続くと認知症は急速に進行します.出来るだけ早い段階で「崩壊>回復」の状態から「崩壊<回復」の状態に変えようというのが脳活性化リハビリテーションのコンセプトです.

 

 では,脳活性化とは何でしょうか.ズバリ,それは認知症患者個々に合わせた適切な刺激(快刺激)を脳に届けることです.学生時代にお世話になった先生からは,「前向きに楽しく頭と身体を使って人と交わる」ことであれば基本的には何でもよい,と教わりました.

 そこで,自分は理学療法士なので身体活動を組み込んだプログラムを考える訳です.身体活動には,①覚醒レベルを上げる,②記憶力を高める,③アルツハイマー病の脳病変を軽減する,④老化の原因となる活性酸素の毒性から神経細胞を守る,といった効果が期待されます.

 

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 さて上の写真ですが,何をしているか分かりますか?

(分かった方は,まずいないと思いますが…)これは懐かしのYMCAを高齢者の方たちと行っているところです.手前のケーシー後姿が10年位前の自分ですが,見て下さい,この体操選手ばりに指先まで伸ばされたYのポーズ!そう,全力でやっているんです.なぜなら一緒に行っている皆さんが笑ってくれるから.見てもらえないのが残念ですが,写真に写っている皆さんは本当にイイ笑顔をしています.

 そして,もう一つ.自分は必ず「○○さん,今のポーズ最高ですね」とか,「△△さんのターンはキレッキレッでしたね」というように対象者を名指しで,オーバーなくらい褒めるようにしています.褒められる快刺激により脳ではドパミンが多量に放出され,それが意欲につながるからです.

 また,アルツハイマー病患者では快か不快の判断で治療への協力が決まる傾向があり,くわえて周囲と過同調する心理特性があるとも言われているので,小グループでの楽しい身体活動は有効だと思われます.

 

 しかし,脳活性化リハビリテーションだけで認知症が改善する訳ではありません.医療だけではなく周囲のケアを含めた包括的な関わりの中で,認知症であっても笑顔でその人らしく過ごせる環境作りの一つとして脳活性化リハビリテーションを行っています.

 

 

              記事担当:理学療法士 山本晋史

「電動車椅子の試用」

 電動車椅子は外出する際の足の代わりとしても使用されます。

 

 最近では、屋外で自走する方を見かけることも増えました。

 

 今回、この電動車椅子に乗ってみた患者さんの感想をお聞きしました。

 

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 こちらの電動車椅子は、レッグサポートの奥行きの調整、レッグサポートの縦横位置の調整、アームポートの高さ・角度調整、アームサポートの前後位置の調整、座面の奥行きの調整、座面の高さの調整、操作レバーの交換(オプション)、杖ホルダー・ボンベホルダーの取り付けなどもできます。

 

 難しいパーツの用語を並べてしまいましたが、患者さんの状態に合わせて様々な調整ができるということです。

 

 さらに、奥行きの前後位置の調整、背張りの調整を行う事もできて、ヘッドサポート高さや頭部の前後左右の回転角度の調整も行う事ができ、座る姿勢まで微調整が可能です。

 

 この車椅子。国際福祉機器展では見た事があるのですが、実際に患者さんが使っている所を見るのは初めて。

 患者さんの感想もお聞きする事ができたので、とても勉強になりました。

 

 感想を以下に示します。

 

 「背もたれが倒れて足が上がるようになるからとても便利」

 「足を降ろしたり上げたりをしてもらわなくても大丈夫だから良い」

 

 起立性低血圧(座っていても起きます)が起きやすい方なので、時々背もたれを倒し、脚を上げて症状が治まるのを待つことがあります。これを人に頼むのが心苦しいので、こういう発言をされたようです。

 

 さらに、

 「狭い場所を通る時が難しい」

 「これは練習しないとできないだろう」

 「自宅に帰った時に廊下を通る事ができるのか」

などの発言もありました。

 

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 もちろん多くの練習が必要ですが、練習を積んだ後、この車椅子を自宅に持ち込んで改修した自宅での試用も必要です。

 その際には、福祉業者やケアマネジャーさんとの連携も重要となるでしょう。

 

 入院中には、介護保険を利用しての電動車椅子のレンタルはできませんので、今回のように福祉業者からお借りできることに感謝したいと思います。

(借りている期間は院内で練習できます)

 

 実際に電動車椅子を自走している患者さんの表情をみると、自分で自由に動かすことができるためか、普段のリハビリのときよりも、さらに生き生きしているようにみえました。

 

 患者さんが自宅に帰った時に上手に生活できるように、今後も他職種と協力しながら自宅復帰の準備をしていきたいと思います。

 

                     記事担当:OTみうら

 

 今回の車椅子、下記の福祉業者からお借りしました。

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問い合わせ先

株式会社フロンティア 群馬営業所

https://www.frontier-ph.com/main.cgi?c=5/3/3/5:4

 

 

腰痛も予防すべきもの

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 県を通じて厚労省からこんなパンフレットが届きました。

 

 各病院、介護施設等にも配布されていると思います。

 

 医療・介護職には大事な考え方ですし、自宅で介護している方にも参考にできることがあると思います。

 

 動画の閲覧も自由ですし、アンケートに答えると資料もダウンロードできるようになっています。

 

 腰痛知らずの介護を目指したいものですね。

 

yotsu-yobo.com

                   記事:部長さかもと

 

歩行速度と脳卒中リスク

 この研究では,メタアナリシスを行い、歩行ペースと脳卒中リスクとの関連を検討しました。

(Walking pace and the risk of stroke: A meta-analysis of prospective cohort studies)

 

 データベースから、成人の歩行ペースと脳卒中のリスクに着目した研究を検索した結果、7つの研究が分析されました。

 7つの研究には、計135,645人の参加者(95.2%が女性、平均年齢63.6歳)と2229件の脳卒中イベントが含まれました(追跡期間の中央値=8.0年)。

 

 歩行速度が最も遅いカテゴリー(中央値=1.6km/h)の人に比べて、歩行速度が最も速いカテゴリー(中央値=5.6km/h)の人は、脳卒中のリスクが44%低いという結果になりました(RR=0.56、95%CI:0.48-0.65)。

 

 また、直線的な減少の関係もあり、歩行速度が1 km/h増加するごとに脳卒中のリスクが13%減少していました。

 

 普段からさっさと歩ける人は脳卒中になる可能性が低く、速く歩く人は、遅い人と比べ脳卒中リスクを4割以上減らす可能性があります。また、心肺機能を高め、楽に日常生活を過ごせるようにしておくためにも、速く歩ける事が大事と考えられます。

 

 速いだけでなく、転ばずに歩ける力も身につけたいものです。

 

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 グラフ下の英文邦訳「速い歩行速度は脳卒中リスクの低下と関連する」

 

 素早く動く事ができれば、脳卒中になるリスクも減らすことができそうです。

 

                  記事担当:部長さかもと

血圧は低く、心も健やかに

 日本人の睡眠時間は世界的にみても少ない状態が続いているようです。

 

 睡眠は交感神経と副交感神経のオンオフを切り替えます。

 

 これが上手にできないと、早朝に体に負荷がかかり、血圧が高くなる症状が見られます。

 

 なので、医師は朝血圧を計りたがるわけです。

 

 話が逸れましたが、下のグラフが睡眠時間と高血圧になる危険率のグラフです。

 

 年齢が高くなってくると、睡眠時間を長くすることが大変になるので、若いころとは逆に、長時間寝ている人の高血圧危険率が上がってきます。

 

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 睡眠時間が極端に短いのに、血圧を下げるクスリだけで効果を上げようとするのには、無理があるかもしれません。

 

 生活習慣がキチンとしているか、自身で確認してみてはいかがでしょうか。

 

 この睡眠の質には、筋トレが関係しているといわれており、筋トレをすることで、睡眠の質を上げることができるようです。

 

 また、睡眠不足は心にも悪影響を与えるようです。

 

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 メンタルヘルススコアが縦軸ですが、短時間・長時間睡眠ともに、このスコアが上昇しているのがわかります。

 睡眠時間が短いと、クスリも効かないとも言われています。

 

 運動、食事、睡眠。

 

 これらを適切に行う事で、病気になりにくくなったり、要介護状態になりにくくなったり、健康寿命を伸ばすための第一歩となります。

 

 コロナ後の新しい生活様式に、この生活習慣も加えてください。

 

              記事担当:部長さかもと
 

 

 

新聞に掲載されましたが・・・

 読売新聞の病院の実力231という記事が、10月に掲載されましたが、その記事は「回復期の実力」をテーマにしていました。

 

 そういえばアンケートが回って来ていたのを思い出しましたが、ここに掲載されている数字が最近のものとはちょっと違ったので、最新の情報をここに示しておきます。

 

 まず、回復期リハ病棟の病床数は、156床です。(+療養病床)

 

 病棟は3つあります。

 

 そして懸案のリハ提供単位数ですが、、、(10-11月)

 

 脳血管リハ 休日8.08 休日外7.69 全日7.77単位

 

 運動器リハ 休日7.39 休日外6.80 全日6.92単位

 

 この7.77単位というリハビリ提供単位。時間に換算すると155.4分となり、2時間35分を超えるリハビリを実施していました。

 

 ちなみに6.92単位も2時間18分ということになり、運動器・脳血管疾患ともに2時間を超えるリハビリを毎日実施していることになります。

 

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 この本ではなく、これに関連する記事です。

 

 それにしても、県内で3つの病院しか紹介されていないと思っていたら、アンケート回収率17%!?と書いてあります。

 

 こういうときにすぐに答えられる病院であることも大事だなと思いました。

 

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 二時間超のリハビリといっても強い運動を二時間もはできませんし、かといって揉んでいるだけ、寝てるだけでは効果もありません。

 

 時間をかけて、動き、学び、休むというメリハリをつける事で、リハビリの効果を高めていきたいと思います。

 

               記事担当:部長さかもと

 

 

 

 

 

病院報

 当院では、取り組みや実績を紹介する広報誌を季刊で発行しています。

 

 今回は診療実績として、2020年度の結果を、言語聴覚室が担当しました。

 

 入院時に経管栄養使用者の割合(グラフ上)と、摂食嚥下障害のある患者さんの退院時摂食状況(グラフ下)を表しています。

 

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 この表は実績の一部を表していますので、全体をご確認いただけると幸いです。

 

 全体は、病院HPのお知らせにあります。

 

 「真ごころ22号」です。

 

 下に貼っておきますね。

reha.gunma.jp

 

                   記事担当:さかもと

新調しました

みなさんこんにちは、PTの下山です。

 

先日、リハビリ道具のひとつ「バランスパッド」を新調しました!

しかも今回は硬さの異なる4種類を揃えました!

 

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バランスパッドとは、その柔らかい性質を利用してバランス訓練を行う道具です。

ヒトは立つために足で踏ん張ります。その踏ん張りに対して床面が反発することで感覚を得てバランスをとるわけです。いわゆる「床反力」というものですね。バランスパッドを使うことであえてその床反力を得にくくし、それを補うための筋力やバランス感覚を鍛えることができるのです。

主にパッドの上に立って使うことが多いのですが、その不安定な状況下で足踏みをしたり、片足立ちをしたり、キャッチボールをしたり、アイデア次第で使いかたは無限大です。ちょっと言い過ぎました。

 

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 今まで使用していたバランスパッドはかなりボロボロになっていました。

 

 経年劣化の影響もあるでしょうが、こういったベーシックなものはリハビリに組み込みやすく応用も利くため、多くの患者さんに使っていただけたのだと思います。

(お疲れさまでした)

 

 安いものではないので消耗品扱いをしたら怒られてしまいますが、ガンガン使われてボロボロになるのであれば道具たちも本望でしょう。

 これからも活躍を期待します!

 

                  記事担当:PT下山

ウィンタースポーツ!

スキーやスノーボードができる季節になりました!

とは言っても、自分は埼玉県出身で大学生のときに1回スノーボードをやったことがあるだけで、そのときもうまく滑れるようにはなりませんでした。

 

むしろ、転んだときの痛みと体力的な辛さであまり良い思い出ではありません。

 

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しかし、せっかくスキー場のある群馬県に住んでいるのならスキー・スノーボードどちらかでもうまく滑れるようになりたいと思っています。

 

ただし、ケガすることだけは避けたいので…

調べてみました!スキー・スノーボードではどんなケガが多いのか。

 

長野県の3つのスキー場で3年間に起きた傷害について集計した研究がありました。

 

この研究で主にわかったことは、以下の4つだそうです。

スノーボードはスキーの1.64倍傷害発生率が高かった。

②スキーでは足の傷害、特に膝関節捻挫が多く、スノーボードでは腕の骨折、脱臼および頭部への傷害が多かった。

③スキーに比べ、スノーボードは傷害の程度が重く、ヘルメット着用率も低かった。

④スキーは上級者の中斜面、急斜面およびコブでの傷害発生が多く、スノーボードは初心者の緩斜面およびスノーパークで平らな斜面(スムース)での傷害発生が多かった。

 

これを見ると、大学時代に行ったスノーボードでも一歩間違えれば大ケガするところだったなという場面を思い出します。

 

実際、当院にも毎年のようにウィンタースポーツで大きな怪我をされて入院される方がいます。

『怪我をするのは一瞬だけど、治すのは大変だ』と患者さんは仰います。例えば骨が折れてから骨が付くまでには多くの時間を必要とします。

グルト(Gurlt)・コールドウェル(Coldwell)の表という骨癒合等に関わる目安があります。折れる場所によって時間が異なりますが、骨癒合までには多くの時間を要し、更に機能回復するには時間が必要であることがわかります。

 

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(あくまでも目安です!!骨折の仕方によっても異なります。)

楽しさとは裏腹に危険も含んでいる事を認識し、スキーやスノーボードをする際には、今回調べたことを考慮して、無理せず安全にやってみたいと思います!

 

参考文献

スキーおよびスノーボードにおける傷害発生率と傷害傾向. 

Journal of Ski Science.15(1),61-67,2018.

 

                    記事担当:PT山田

リハビリとは関係ありませんが・・・入院申し込みの話

 今日は「入院申し込みの話」。

 

 当院は紹介型の病院であり、ほとんどの患者さんが急性期病院からご紹介をいただいて、入院されています。

 

 そのときに利用される病歴などを記載した用紙が、診療情報提供書です。

 

 この診療情報提供書を当院では院長がすべてに目を通し、回復期や療養病棟でのリハビリ適応があるのかないのかを検討して、入院判定会議にかけています。

 

 入院可と判断されると、病棟や主治医が決まり、地域連携室を通じて、対象者に入院日の打診がされます。

 

 入院日には、ご家族と一緒に来院されるようお願いしていますが、様々な書類や同意書への記載、さらに主治医の初診など、ご家族にも一緒にしていただく事が沢山あります。

 

 時々、ご家族とのスケジュールが合わず、入院できる日が遅くなってしまうこともありますが、リハビリも早期介入が有効とされることが多いので、できる限り早い入院にご協力ください。

 

 また、入院受付の時間帯を10時~11時に指定されていると思います。

 遠方の方にはご迷惑ですし、なんでこんな早くから・・・とおっしゃられる気持ちもわかります。しかし、病院ですので食事を提供するにあたっても、医師の処方が必要です。これが何を意味するかというと、医師が診察をする前には、病院食の提供ができないということを意味します。

 この時間の来院は、実はスムーズに昼食を提供するためにはベストな時間だったということです。とはいえ、朝早くから申し訳ございません。

 

 さて、少し脱線してしまいましたが、入院申し込みの話の続きです。

 特に脳卒中は冬期発症が多くなるためか、申し込み件数も月によってばらばらです。昨年の月別入院申し込み件数を確認したところ、月によって1.8倍もの開きがありました。

 

 下に示すグラフは、直近の週ごとの申し込み数ですが、多いときと少ないときで2倍以上の開きがあります。

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 実際の入院の際には、ご家族に来ていただいて、同意書や計画書などをキチンと処理すると、一日に入院できる患者さんの人数にも限りがあります(主治医一人あたり一日2名程度まででしょうね)。


 こういう病院の都合と、患者さんやご家族の都合を合わせると、入院できる日が意外に後ろになっていたということも時々あるようです。

 

 ベッドが空いているように見えても、まとめて入院できる人数には限界があるので、空きベッドが暫く続くこともあります(申し込みがまとめて来ると、その後の入院スケジュールが埋まってしまいますし、申し込みがないと入院0の日もあります(-﹏-。))。

 

 診療情報提供書をいただいてからできる限り早くご連絡を差し上げますので、ご協力をおねがいいたします。

 ちなみに今週は申し込み多数です。申し込み感謝致します。

 

               記事担当:部長さかもと