高血圧のケアや予防に、習慣的な運動や身体活動の増加が有効であることは、世界中の研究機関から報告されています。
英国ロンドン大学の分析では、運動に降圧薬と同程度の効果が見出されました。
この研究では、ウォーキングやジョギングなどの持久性トレーニングとダンベルを持ち上げるなどの筋力トレーニング、それぞれ、または組み合わせて検証すると、それぞれ行うよりも、持久性トレーニングと筋力トレーニングの組み合わせが血圧の低下に効果的であることがわかりました。
運動が血圧を下げる理由は、降圧物質の分泌が増加することが挙げられます。
運動によるプロスタグランディンの内皮放出は、血管を拡張し、血中の中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを増やし、生活習慣病予防にも役立ちます。
健康飲料に含まれるタウリンも降圧物質ですが、体内でも合成されています。運動によって分泌が増加し、血圧が上昇するのを防ぎ、正常化します。さらに、プロスタグランディンと同様に、血中の総コレステロール量や中性脂肪を減らす働きもあり、生活習慣病予防に役立ちます。
また、筋を動かすことで血管の内皮細胞からNO(一酸化窒素)が分泌されます。NOは筋肉を硬直させて一度血流を悪くしてから一気にゆるめることで、分泌量が増えます。持続性トレーニングでも分泌が増加しますが、筋肉に負荷をかける筋トレの方がより効果的にNOの分泌を促します。
血液を全身に送り出すポンプの役割は、心臓だけではありません。手足の末端まで血液を送り届けるには、筋肉が補助ポンプとなって血液を送ります。中高年で筋肉量が少ない人は、それだけ心臓ががんばって血液を押し出すので、その結果、血圧は高くなるといわれます。
また、運動不足や加齢で下半身の筋肉が減り、それに伴って毛細血管の数も減ると、下肢へ循環する血液が減り、血圧が高くなります。下半身の筋肉は全体の70%を占めていますので、下半身の筋肉の衰えは、相当な筋肉量の低下となるのです。
すでにウォーキングやジョギングなど持久性トレーニングを習慣にしている人は、腹筋背筋、スクワットなど筋トレをプラスして、特に腹筋や背筋は、太い血管が通っているので降圧効果を高めます。
運動療法の対象者は高血圧の症状によって異なることがありますので、薬物等で治療中の方は一度医師に相談してから実施してください。
記事担当:部長さかもと