群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

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不老長寿の鍵を握る生き物?

 ハダカデバネズミという生き物をご存じでしょうか?

 名前だけでネズミというのは分かりますが、実際に見たことはあるでしょうか?

 実物はカワイイかキモチワルイか分かれることと思いますので、いらすとやさんのイラストに留めておきます。興味のある方は、検索してみて下さい。

 

 

 ハダカデバネズミの名前の由来は、体毛のない体と曲がった長い出っ歯とのことです。また豚のように鼻がつきだしているのも特徴です。

 英名はnaked mole ratで、ハダカ・モグラ・ネズミだそうです。なぜモグラ?と思いますが、地中にトンネルを作って生活し植物の根などを食べているからだそうです。

 最初に発見された時は、病気で気が抜けているのか、毛が生えそろっていない成熟前と思われていたそうです。

 

 同じ体長10㎝程度のマウスの寿命は約3年ほどだそうです。しかしこのハダカデバネズミは10倍の30年も生きるそうです。そして老化の兆候はほとんどみられなく、生存期間の8割を過ぎたころからみられてくるとのことです。人間が100歳まで生きるとすると、80歳頃から老化がみられるということになります。

 健康長寿の理由の一つとして、「新社会性」が挙げられています。「新社会性」とは、①2世代以上が共存している、②協力して子育て を行うです。ハチやアリも新社会性を持つ生き物です。『人間は社会的動物である』というアリストテレスの有名な言葉がありますが、階級(分業)が明確に決まっていないので、新社会性動物には当てはまらないそうです。

 新社会性と長寿は一見関係なさそうにみえますが、シロアリの女王も70年程度生存するため、長寿傾向にあるそうです。階級が決まっているため不平等ではありますが、それがためストレスが少なく老化がみられないという考え方もあるそうです。

 

 

 またガンになりにくい「がん化耐性」を持っている点でも注目されています。人間やマウスのips細胞は未分化のまま生体に移植すると、「奇形腫」という腫瘍を作ってしまうそうです。しかしハダカデバネズミのips細胞は移植しても腫瘍を作らないそうです。

 マウスES細胞には腫瘍形成に関係するがん遺伝子ERASがあるそうですが、ハダカデバネズミはそのERASが働かなくなる変異が起きているそうです。

 

 ハダカデバネズミは進化の過程で、地下生活が新社会性成立のきっかけになり、新社会性が地下での生活の効率化・継続性を高め、その結果で地下での低酸素環境に順応し、気温が一定の地下にいるため恒温機能が弱まって変温性になりました。

 この低酸素適応と変温性が、老化耐性・がん化耐性の獲得に何らかの影響を与えたという可能性があるそうです。

 

 秦の始皇帝も求めた不老長寿ですが、終わりがない人生は本当に幸せなのか?とも思えてきます。いつか終わりが来るから今を大切に生きよう、と思えるのが人間ならではかもしれません。

 しかし、この研究が進む事で、リハビリや運動が、長寿に繋がる理由も明らかになることでしょう。

 

                              記事担当:ST日野