前回、COVID-19等により変形性股関節症の手術を回避されている方は向けて『痛みの少ない歩き方』をお伝えしました。今回はシリーズ第2弾として『股関節の運動療法』についてご説明したいと思います。
術前リハ効果を謳う論文報告では
変形性股関節症における術前リハの効果をコントロール群(術前リハなし)と比較し
- 術後のHarris Hip score (*HHS)の改善
- 術後の歩行・階段昇降・トイレ移乗・椅子移乗開始日短縮等得られたとの報告があります
術前リハを行った方が術後動作能力の回復が早いという解釈ができそうです。
*HHS:疾患特異的な健康状態の把握を行う評価法であり、世界で最も用いられている評価指標です。
保存療法時(術前)における運動療法の効果として変形性股関節症治療ガイドラインにおいては
◎運動療法は短・中期的な疼痛の緩和・機能改善に有用である (Grade:B)とされています。
週1回~4回の運動療法を実施した群では関節可動域訓練・筋力強化・水中運動などに疼痛緩和と身体機能改善効果が得られたとの報告がされています。
一方で術前リハを行っても術後の痛みに変化はないと報告されているものやHHS60点未満はエクササイズ適応がないといった報告もあります。
簡単にまとめると術前の運動療法の効果としては
ⅰ.術後の歩行能力・筋力・可動域の改善が良好となる可能性があること
ⅱ.術後の動作能力の早期改善に寄与する可能性があること
ⅲ.術前の一時的な身体機能・疼痛に改善効果が見込めること
注意:罹患の進行状況により効果が乏しくエクササイズ適応がないこと
*ブログで個別適応する運動療法を具体的に提示することは難しいと考えられます。痛みを増悪させない範囲での運動療法が重要となりますし、痛みが強い場合はその効果も乏しいため下記に提示する方法においても痛みが出現する方は実施せず、医師や理学療法士の指導に従い、運動療法を施行することをおすすめします。
基礎的な股関節周囲の筋力および関節可動域の維持・向上を目的とした運動を以下にお示しします。参考程度にご覧ください。
回数や強度に関しては痛みの出ない範囲で行うことが基本となります。上記した図のような姿勢が取れない場合には除外してください。
術前リハの難しい点は、罹患部位に炎症を起こさない範囲で行うことにあります。繰り返しとなりますが、くれぐれも無理をされないようにお願いします。
COVID-19という厄介な感染症は未だに我々を苦しめて止みません。疾病を患いながらも耐えて頂いている方や支えて頂いている方に心より御礼申し上げます。この記事がどなたかの役に立ってくだされば幸いに思います。
記事担当:PT安齋