変形性股関節症、膝関節症に罹り、長い期間を経て、人工関節の手術を行った患者さんも、急性期を脱すれば、当院のリハビリの対象になります。
人工関節に入れ替えて暫くは、手術による侵害刺激と、長年関節を動かさないように生活してきたことで、痛みがなくなったのに、関節の動かし方がよくわからないという経験をします。
長年、体重を掛けたり、筋肉を使ったりすることを避けながら痛みに耐えていたので、筋肉が衰えています。また、関節を動かすと激痛が走るので、できる限りその痛みのある関節は動かさないようにしています。
こういう状況で長年の生活を送られているので、「さあ痛みはなくなった。どんどん動いてイイですよ。」と言われても、そんなに簡単にいくわけないじゃないですかというのが、この病気を患った方の言い分なのではないでしょうか。
昨今は、医療費削減の名の下、できる限り入院期間を短縮して、手術した病院を退院した後は、そのまま自宅で生活するというのがトレンドになっているようです。
でも、本当にそれでいいのでしょうか。現在でも、変形性関節症の術後は、回復期リハ病棟でのリハビリが認められています。
当院では、変形性股関節症術後の患者さんに、歩行アシストを使ってリハビリをする際、股関節がどの位動いているのかを計測しています。さらに数回使った後にもどう変化したのかも計測しています。
一例を示すと、この方は左の人工関節置換術後の患者さんです。入院されてからある程度の期間、通常のリハビリを行ったあと、股関節の動きがまだ悪いとの事で、10回程度歩行アシストによる歩行リハビリを行いました。
右足は良い方の脚なので、関節の動きに前後で差はあまりありませんが、
大きく差が出るのは、手術した側の股関節の動きです。
本来伸展もプラス~度で表現しますが、一本のグラフで表現するため、マイナスで表現しています。体幹から下りる垂線よりも後ろに動いた場合をマイナスとしています。
術側では、初回と比べ、10回終わった後(終回)では、屈曲伸展合計6.3°関節が大きく動かせるようになりました。
関節角度6°と言われ、なんだそれだけか、と思われるかもしれませんが、これが意外に効果が大きかったようです。
歩行速度は1.02m/sec → 1.14m/secと伸び、
平均歩幅は0.476m → 0.588mと 10cm以上伸びています。
僅か10cmかもしれませんが、一歩で10cmですからね。
歩行時の動画をキャプチャーしたのが、下の写真です。
通常歩行をしていただいていますが、脚の開き具合に違いがあるのがおわかりいただけると思います。右下が終回後ですが、一歩がカメラの画角からはみ出してしまっています。
このように、股関節を動かす練習をしてから、自宅復帰を考えられてはいかがでしょう。
最近は当院でも人工関節の患者さんは、短期集中のリハビリとなっていますので、1ヶ月程度で中身の濃いリハビリをしたいと思います。
宜しくお願いします。
記事担当:リハ部長さかもと