私は、理学療法士ですが、ピラティスの勉強を続けてきました。その経験の中で、ピラティスの考えやスキルはリハビリにも多いに役立つことを確信しています。今回は、最近話題の「ピラティス」をお伝えしていきます。
ピラティスのイメージを参加者に聞くと、
「マッチョやセレブがしているものでしょ?」
「ヨガの一種ではないの?身体硬くて出来ない」
「筋トレなんてお年寄りは出来ないわ」
と言われることが多いです。
ハードルが高いようですね。でも実際はそんなことありません。私は7年前に双子を出産し、産後ボロボロの身体を整えたくてピラティスをはじめました。
ピラティスは、Pilates氏により約100年前に戦時中の負傷兵のリハビリとして開発されたものです。始まりこそリハビリなのです。
さて、先日、コロナ禍で3年ぶりに対面の講演会を開催することになった群馬県看護協会中之条地区支部大会の講演会に講師として呼んで頂き、参加者にピラティスを提供してきました。
「ピラティスでリフレッシュ ―カラダとココロのつながりを感じよう―」
まずは講座で、ピラティスを通して身体の何が変わるのかを伝え、その後実際にピラティスを体験して頂きました。
ピラティスは体幹を重点的に鍛えるものと思われがちですが、ピラティスが大切にしているのは「姿勢」であり、多くのエクササイズは背骨や骨盤の動きに焦点を当てます。
ピラティスで姿勢が変わるのは背骨が「伸びる」からです。
ここで姿勢をつくる重要なキーワードがふたつ。
- 最適な姿勢=「ニュートラルポジション」
- 軸を伸ばす=「エロンゲーション」
ヒトはかつて、視野を広げるために進化し、直立二足歩行に適応するため多くの筋骨格系が変わりました。特に背骨のS字カーブはヒトの象徴であり、ヒトとして立つためには背骨のカーブが必要です。生活習慣・一側性のスポーツ動作(野球・バレエ・ゴルフ・テニス等)・仕事動作・癖などで姿勢が変化し、ストレスを受けるのです。
ここで問題です。
姿勢が整っていると、背骨などの関節への負荷は少なく、筋活動はより効率的になります。お仰向けに寝た状態と比べて立位ではどの程度エネルギーを使うでしょう?
立っているだけでどのくらい疲れるか?を考えてみて下さい。
正解は 8%。
多くの方が驚いたのではないでしょうか。
姿勢が整えば、寝た状態と比べて「たった8%しか」エネルギーを使わないのです。
ニュートラルポジションでエロンゲーションをすることで姿勢が変わる。しなやかな背骨と体幹筋群活性化による姿勢教育が「ピラティス」ということです。姿勢を整えるだけで、参加者の皆さまから「視線が変わった」「背が伸びた」「お腹が薄くなる」など感想をいただきました。素晴らしい感覚ですね。姿勢が整った証です。
さて、みなさん、ラジオ体操など【腰をねじる】運動の経験があると思います。これは実は、理学療法士としては意識改革をしていきたいところ。なぜなら、腰椎の回旋は本来わずか5~10度。つまり腰は捻じれば故障するということ。では、どこを捻じる?それは、腰椎の上に位置する胸椎です。胸を動かしましょう。
「胸椎は可動させる」
「腰椎は安定させる」
みなさんに胸を動かして腰を守る背骨の動きを体感して頂くと「今まで使ったことのないところが動いた感じ」「腰痛があるのにこれなら捻っても痛くない」と感想を頂きました。
ピラティスは、正しい動きのパターンをつくります。
“ニュートラル”
“エロンゲーション”
“腰ではなく胸を動かす”
今回は、この3つをキーワードに講座を行いました。終了後、「姿勢が変わるのが良く分かった」「すっきりした」「良い運動で筋肉痛になりそう」などの感想を頂き、実感して頂けたことに私もとても嬉しく感じました。
ヒトはみな平等に年齢を重ねます。筋力や体力が落ちたなと感じることや体型の変化に悩む方も多いかもしれません。ピラティスを指導していて感じることは、「何歳からでも身体は変わる」ということ。身体に感じる痛みや悩み、あるいは気分の落ち込みを解決する手段としてピラティスに触れてみてはいかがでしょうか。
ちなみに、当院にはピラティスを学んでいるスタッフが他にも在籍しています。リハビリにピラティスの要素を加え、姿勢や歩行を改善していく手段として活用しています。
みなさん、何歳になっても、いきいきとしたカラダとココロを目指しましょう。
記事担当部署:PT室