脳卒中後の「疲労」はよくある合併症ですが、年単位で持続する可能性があります。
このような症状はリハビリの際、回復を阻害する要因になります。
脳卒中後の疲労に関しての原因は不明ですが、視覚、体性感覚、前庭感覚などの中枢性感覚の統合障害が非効率的な姿勢制御を引き起こしている可能性があります。
これら感覚統合をうながす方法として「前庭リハビリテーション」があります。
脳卒中後疲労に対する前庭リハビリは、以下の論文で検討されていますのでご紹介します。
A Ghaffari B Asadi:The Effects of Vestibular Rehabilitation on Poststroke Fatigue: A Randomized Controlled Trial Study. Stroke Research and Treatment 2022
男性脳卒中患者32人を、前庭リハビリ群と対照群にわけています。
前庭リハビリテーションの練習は、トランポリン、固い地面、スポンジ、バランスボードの上で目を開いたり閉じたりしながら行う運動、頭を横、上、下に動かす運動、重心を変えながらボールを投げたりキャッチする運動、頭を動かしながら歩く運動、手に持ったボールを左右に動かす運動から構成されている。眼球運動は1セッションあたり10分程度行いました。
疲労度やうつ度、日常生活動作のBADLとIADLにおいて、前庭リハビリ群は対照群とくらべて有意な改善を認めました。
リハビリの際にすぐに疲労を訴え、練習を嫌がる患者さんは結構いらっしゃいます。治療可能性のヒントを与えていただきましたので有効に活用できると良いでしょう。まずは、目の動き、首の動き、とこれらの協調性を高めるところから援助していくと身体的負担を訴える方にも応用できると思います。
記事担当:部長さかもと