自己身体の気づきである「身体所有感」と「運動主体感」のうち、「運動主体感」だけが運動能力の改善に寄与することを、東北大学大学院情報科学研究科松宮教授らが明らかにしました。
見ている身体を自分の身体であると気づくとき、人間は以下の二つを経験し、これら二つの経験が運動能力の向上に関わっていると仮定されていました。
1.見ている身体を自分の身体の一部だと感じる(身体所有感)。
2.自分が身体を動かしていると感じる(運動主体感)。
自己身体の気づきにおける、これら二つの経験のうち運動主体感だけが、運動能力の向上に関わっていることが判明しました。
患者さん自らが、動きにくい手や足を動かしたという経験をすることで、運動主体感を高めることができ、それが運動能力を向上するのに役立ちます。
従って、動きを伴う動作を電気刺激による筋活動アシストや、ロボットなどによる動作アシスト、またはVRなどを患者さん自身の動きに合わせ、活動を増幅させることによって、運動主体感を高め、これが運動能力改善に寄与すると考えています。
VR(virtual reality:仮想現実)
この研究は、情報科学の観点から人間の身体認知のメカニズムを解明して、運動機能障害や心理的発達障害などの治療に役立てることを目標としているそうです。
運動機能障害を有する患者さんは、心の中で感じている自分の手や足にも異常が生じており、この「心の中の身体」の回復が運動機能障害を克服する鍵を握っています。
現在のリハビリテーションでは、この「心の中の身体」の回復を考慮できないため、リハビリテーションの効果が治療的介入では持続しないと考えられています。たとえ障害を患った身体部位が治療的介入で動くようになっても、「心の中の身体」が回復していないと、しばらくすると再びその身体部位は動かなくなっています。
患者さんが自分で手足をコントロールできたという経験を、電気刺激やモーターなどで補助し、その経験を積み重ねることにより、心の中の体を回復させることができるでしょう。
以前ご紹介をした当院の取り組み、一部だけ披露します。心の中の体を改善するために、これらの活動が後押ししてくれそうです。
記事担当:部長さかもと