我々療法士はリハビリを行う際に、目標を立てます。しかし、目標がいつの間にか方針に変わっていることがあります。
例えば「速く歩く」というのは、「~のようにしたい」と願望も含めて方向性を示すため、「方針」です。
どのくらい速く歩ければ良いのか、どのくらいの期間でそれをクリアすれば達成と言えるのか、そこが曖昧です。
しかし、「次の大会までに100mを10秒で走る」というのはどうでしょうか。
具体的で測定可能ですので、これは「目標」と言えるでしょう。
入院中の患者さんで言えば、「自宅で生活できるようにする」というリハビリの進む方向は「方針」です。
3ヵ月後に自宅復帰するために、「自宅のベッドからトイレまでの10mを自分で歩けるようになる」とすれば、到達点を表しているので、これが「目標」です。
目標とは方向と大きさを持つ、数学で言うところの「ベクトル」のようなものです。
入院中の患者さんは入院期間がある程度設定され、家に帰るという大きな方針があるので、自ずと目標は設定しやすくなります。
しかし、一方で、自宅に帰った後には「野球観戦に行ってみたい」、「つりに行きたい」、「草むしりがしたい」、「自宅で続けて生活がしたい」、など挙がることが多いのですが、これらは全て「~したい」という方針と言えます。
期間の制限が無い自宅生活では、気をつけないと目標と方針が混在しやすくなります。
リハビリで大切なのは、それらを行うためにどのくらいの期間でどういう能力を身につけるべきか、定期的に具体的な「目標」を設定しながら、患者さん・ご家族と一緒にそれに向けて進めて行くことが大切です。
また、目標設定は療法士などの医療側が提供するべきものではなく、患者さんと一緒に考えて行くべきものです。
本来何がしたいかは患者さんが普段から思っていることを具現化するべきです。この目標には患者さん自身が何をしたいか、興味や関心が含まれていないと意味がありません。
例えば園芸や家庭菜園などをすることに興味がある患者さんに、書道を勧めたらどうなるでしょうか。興味をひく確率は低く、やってみたいとは思ってくださらないでしょう。
このように、患者さんからも自身の興味や関心があることを話していただき、目標設定はやれるようになったら楽しそうな事を設定します。
自分が本当にやってみたい目標を見つけられれば、それだけ良くなる可能性も高くなると考えられます。
この設定が上手にできるかどうかで、改善に差が出ると思います。
記事担当:部長さかもと