群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

回復期リハ病棟156床。ロボットリハ稼働中。100名超のリハスタッフで365日リハビリ邁進中。一緒にリハビリがんばりましょう。

免荷歩行をどう使うか

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 当院で活用中の免荷式歩行装置です。

 脳卒中の歩行再建では最近あまり使われなくなったように思います。

 なぜでしょうか?

 
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 有効性について否定的な論文も増えてきた事が直接的な原因かもしれませんが、脳卒中に限らず、歩行にはこの倒立振子モデルを考えなくてはなりません。

 歩行の際、前に出した片脚で支える時期には、重心が上方に移動し、反対側を前に出す時期には、重心が下方に移動します。
 
 これを前に進むための推進速度で見ると、上の図で真ん中の時期までは減速し、右側の時期までは加速します。
 
 以前示したモデルでもう一度表すとこのようなイメージになります。

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 山に登るわけですから、速度も落ちる訳です。

 ここで大畑論文を・・・

大畑光司、市橋則明:健常成人における体重免荷歩行の下肢筋電図解析 2004

 詳細は読んでいただきたいと思いますが、”体重免荷歩行トレーニングが垂直方向への免荷に働くだけでなく,水平方向の推進力に対して抵抗として働く可能性がある”
ということで、免荷することで推進力には邪魔になるようです。

 従って、私は免荷式歩行器を使う時期を分けて考えたいと思いますが、

 脚を振り出す練習が必要で、歩行速度も遅く、麻痺の改善を優先するような時期には、20%程度の免荷歩行を行います。

 その後、脚がある程度出るようになって、立脚の重心を上に持ち上げる”倒立振子”を再建する時期には免荷を減らし0%で行うようにします。

 0%では免荷する必要はないだろうとツッコミが入りそうですが、0%免荷は患者さんが転びそうになったときに、ハーネスが転倒を予防してくれるという良い点があります。

 人間の反応は0.3秒かかるそうで、理学療法士が転倒の0.3秒前に支えてしまうと、患者さんが転ぶ学習ができないという指摘があります。
 よって0%免荷にはかなりの意味がありそうです。

 このような知見を基に、タイムリーな時期に適切な療法が提供できるようにしたいものです。