群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

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歩行時の安定性を高めるために

 股関節の外転筋は、歩行時の骨盤を安定させるために大切な筋肉です。

 

 変形性股関節症などの疾患による人工股関節の手術後は、この筋肉に問題が生じやすくなり、歩行時に体が横にブレやすくなるという特徴があります。

 

 そこで、この筋肉を鍛えましょうと言って、筋トレを行うのが、一般的な理学療法とされます。

 

 でも、これは効果的でしょうかというのが、今回の題材です。

 

 筋肉の線維は主に二つに分類され、

 

 速筋と遅筋があります。

 

 速筋は収縮する力が強く、速い動きができる筋肉ですが、持久性が低く、

 

 遅筋は収縮する力は弱いですが、持久力が強い筋肉です。

 

 スポーツ選手でいうと、スプリンターは速筋の割合が多く、

 

 マラソン選手は遅筋の割合が多いといわれています。

 

 変形性股関節症になると、股関節外転筋の速筋線維比率が下がると指摘されており、

 

 歩行などの比較的速い運動において、外転筋の瞬発力低下は、骨盤のブレを引き起こすことにつながります。

 

 歩行時に特に外転筋が必要な場面は、歩行時に踵を着いてからわずか0.2秒間と言われており、この瞬間、下肢に体重の120%程度が掛かります。

 

 この急激な変化に対応できないと、歩行時の股関節のブレが残存しますので、

 

 単純に足を持ち上げるような運動では、この速筋は鍛えることが出来ないようです。

 

 テーマは速筋の強化ということになりますが、これに対応するためには“筋肉が伸ばされながら収縮する”という遠心性収縮が有効とされています。

 

 また、実際に体重が掛かるときの股関節角度は少し内側に入っている状態(内転位)ですので、5~10度、股関節が内側に入った状態で支えられることも必要です。

 
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藤田直弘作 一部改変

 横向きに寝て、足を持ち上げた位置からゆっくり下ろし、足部が床に着くか着かないかという位置でしばらく支え、その後また持ち上げるという運動を意識して行うことが有効です。

 

 もう一度繰り返しますが、持ち上げることに意識をおくのではなく、ゆっくり下げる・床ギリギリで保持するというところに意識を持って行うことが大切です。

 

 頻度や運動方向などは、理学療法士の具体的指導がイメージしやすいと思いますので、細かいことは担当の理学療法士PT)にお問い合わせいただきたいと思います。