群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

回復期リハ病棟156床。ロボットリハ稼働中。100名超のリハスタッフで365日リハビリ邁進中。一緒にリハビリがんばりましょう。

高齢者への言葉遣い改善がもたらす効果

 高齢者に向かって大きな声で、ゆっくり大袈裟に話しかけるのは、かなりの違和感を持つことがあります。

 耳が遠く、認知症が進んでいるからと配慮した結果だとしても、大人の尊厳を削がれている感じがする。

 こう感じるスタッフもいるようです。

 こういう話し方は、よくないと先輩から指導をされることはありましたが、根拠までは話してもらえませんでした。

 

 ある論文からの引用です。

 認知機能障害を踏まえたコミュニケーションの配慮は重要である一方,認知症についての適切な理解がないと,時に(エルダースピーク)Elderspeak と呼ばれるやり取りになる危険性があります。

 Elderspeak とは,高齢者に対して乳幼児に話しかけるような大げさな抑揚や高い音程,過剰な復唱,ゆっくりとした口調や極めて短い文法などが用いられるコミュニケーショ ン のことです。

 その背景には高齢者に対する偏見や差別であるエイジズムがありますが,用いている当の本人はそのことに気づかず良かれと思って行っている場合もあり「善意あるエイジズム」と呼ばれることもあります。

 高齢者施設に勤める看護助手を対象に Elder-speak について調査した研究によると,高齢であること,記憶や見当識などの認知機能障害がある場合や身体介助をしている時に Elderspeak の使用が適切であると捉えられやすく,逆に怒りを表出している時や家族や他の利用者などが傍にいる時には適切でないと評価されやすいです。

 また,Elderspeak は認知症の人が攻撃的な時など BPSD を呈しているよりも普段の自然な状態の時に現れやすくElder-speak の使用は介護に対する抵抗を起こりやすくします。Elderspeak の使用は本来避けるべきであるにもかかわらず,認知症の人との関係性を構築するためには Elderspeak の使用が有用だという,誤った認識があります。

 このElderspeakはある職種の6.6%の対話に含まれ、年齢の高いスタッフほど頻繁に発生、さらに入院日数が増えると増加する傾向もありました。

 しかし、このElderspeakをわずか10%減らすだけで、介護拒否リスクが77%減少するという報告があります。こうした話し方を止めるだけで、介護拒否やリハビリ拒否が減少する可能性があるのなら、今日から言葉遣いを丁寧に変えてみてはいかがでしょうか。

 

記事担当:部長さかもと