海外論文の紹介です(日本の病院です)。
入院中の嚥下障害(飲み込みに問題がある方)患者を、退院後も追跡調査すると、一年後には約半数(56.1%)が、肺炎で亡くなっていました。
嚥下障害のない人では、11.2%が肺炎で亡くなられていました。
これは、統計学的に意味のある差です。
同病院では、嚥下障害の評価以外にも、舌圧の評価を行っていました。
そこで舌圧20kpa未満と以上で分類して、追跡調査をすると、下の生存曲線が得られました。
舌圧20kpa未満の患者さんの44.3%が肺炎で亡くなられていたのに対し、20kpa以上の患者さんは一年後、肺炎では一人も亡くなっていませんでした。
これ、残念ながら統計的に有意ではないという結果でしたが、明らかに差があると考えられます。しかし、この正常とされる舌圧のハードルが高く、20kpaを超える症例は、わずか11例だったことが、差が出なかった原因と言えそうです。
ここから言えることは、20kpaのハードルを越えることはなかなか大変だということですが、入院中にしっかり鍛えていただきたいと思います。当院では同様の評価も行っています。
具体的なトレーニングの方法はSTから指導されると思いますが、自分でできるトレーニングとしては、「良く喋る」ということです。
会話では聞き手にまわってしまっても、「良く話した」という印象を持つことがありますが、大事なのは自ら「喋る」と言うことです。
肺炎になりにくいようにするためにも心がけていただきたい習慣です。
記事担当:部長さかもと
引用文献:
Yuki Sakamoto, Gohei Oyama, Masahiro Umeda, Madoka Funahara, Sakiko Soutome, Wataru Nakamura, Yuka Kojima, and Hiroshi Iwai, Effect of decreased tongue pressure on dysphagia and survival rate in elderly people requiring long-term care : J Dent Sci. 2022 Apr; 17(2): 856–862.