群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

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ホワイトカラーは長生きできるか

 椅子に座りっぱなしは、短期的にはエコノミークラス症候群を誘発します。

 

 怖いですね。

 このような急激な体調変化は病気になったことがわかりやすいですし、短期的に気を付けることもできるでしょう。

 

 しかし、長期的にはどうでしょうか。

 

 米テレビ局は「どんなに運動する習慣があっても、長時間の着席は早期死亡率を上昇させる」と発表しました。

 1日中座りっぱなしの生活を送ることは、心筋梗塞脳卒中などの心血管疾患のリスクや死亡リスクの上昇と関係することが知られています。

 対策として、「中強度から高強度の運動をする」により死亡リスクは下がるという報告がされてきました。

 

 このほど、米コロンビア大学の研究者らは、「強度にかかわらず、運動をすれば、座り続けることによる健康被害を減らせる可能性がある」ことを示しました。

 

 対象となったのは、米国の45歳以上で、脳卒中リスクに人種差や地域差などを検討した「REGARDSスタディ」に参加した人々です。その人々は、2009~2013年に、腰に活動量計を装着する検査を受けました。7日間連続で、起きている間は加速度計を装着する生活を送り、1日に10時間以上の装着を4日以上できていた7999人(平均年齢63.5歳)を選び、今回の分析対象にしました。

 

 活動量計によると、対象者の低強度活動時間は平均188.0分/日で、中高強度活動時間は平均13.2分/日でした。装着時間の77.6%は座位で過ごしていました。

 

 分析では、1日の座位時間のうちの30分を、30分の低強度活動に置き換えると、死亡リスクが17%低下することが示唆されました。さらに、30分の中高強度活動に置き換えれば、リスクは35%低下することが示されました。

 

 次に対象者を、通常の運動時間が少ない人々と、通常の運動時間が長い人に分けて、運動への置き換えの利益を調べました。1日の活動量計装着時間に占める運動時間が、集団全体の中央値より下だった人々では、低強度活動または中高強度活動への置き換えが、死亡リスクを低下させることが示されました。一方で、運動時間が集団全体の中央値より上だった人々では、運動への置き換えの利益は見られませんでした。

 

 なお、今回の研究では、連続する座位時間に中断を加えるだけでは、死亡リスクに影響は認められませんでした。

 

 以上より、座りっぱなしの生活による死亡のリスク上昇を軽減するためには、運動への置き換えが有効であること、運動強度が低くても、30分の置き換えが利益をもたらすことが示唆されました。

 約8,000人の成人を対象とした研究では、年齢・性別・人種・BMI・運動習慣に関わらず、座っている時間が長い人ほど、早期死亡のリスクが高まることが明らかになりました。

 

   エコノミークラス症候群の予防法 座る時間が長い人の対策にも 官邸twitterからいただきました


 技術革新に伴い、パソコンやスマートフォンによって、様々なことが遠隔でできるようになり、私たちの生活は日々便利になっています。

 それと同時に、私たちは昔よりも座る時間が長くなっています。

 

 コロンビア大学の数年前の研究では、成人の1日の着席時間は平均9~10時間でした。

 しかし、現在では1日当たり13時間以上座っている人の割合が大幅に増え、1日11時間未満の人に比べて、死亡のリスクが200%高くなるという結果も発表されています。

 

 座りすぎは、脚の筋肉を長時間動かさないことにより代謝が悪くなり、糖尿病や心臓病、肺塞栓、乳がん、子宮体がんのリスクを高めます。

 

 専門家は、立ち上がって周辺を歩いたり、ストレッチをしたりするなど、簡単な運動を兼ねた休憩を30分ごとに取ることを勧めます。

 

 実際に、30分に1度休憩を取る人は、長時間着席している人と比較して、早期死亡のリスクが最も低かったことも明らかになってきました。

 

 「Sit Less, Move More(座っている時間はより短く、動く時間はより長く)」は、アメリカ心臓協会が奨励しているガイドラインです。

 

 米国疾病対策予防センターでは、1週間で2時間30分の適度な強度の有酸素運動と、1週間に2日以上の筋力トレーニングを推奨しています。

 

 しかし、運動することの大切さよりも「座り続けることの危険性」と「30分ごとに立ち上がり、健康リスクを減らす必要性」が大事です。

 

 また、年齢が上がるほど、着席時間が長くなるというデータもあります。

 私たちは、加齢に伴って、身体的かつ精神的に機能が低下します。総務省統計局による調査では、25~34歳の若者と、65~74歳の高齢者の1日の時間の使い方を比較したところ、高齢者のグループの着席時間は、若者のグループの約2倍であることが明らかになっています。

 つまり、私たちは普段からよほど意識しなければ、筋力と体力の衰えに合わせて着席時間がどんどん長くなります。

 さらに日本は勤勉で、労働時間の長い国とされています。

 例えば、日本の一般企業に勤務する正社員は、平均で年間約2,000時間働きます。

 ドイツやフランスと比較すると、400時間ほど長く、日本は世界的に見て労働時間が長く、かつ着席時間も長い、「早期死亡リスクを高める労働環境」です。

 

 そのため、最近では、立ったまま仕事をする「スタンディングデスク」や立ったままのミーティング、立ったまま食事をするスペースなどを導入する企業も増えています。

 

 また、スマートフォン・アプリやスマートウォッチなどで、座り癖やストレスの度合、休憩が必要なタイミングなどを知らせてくれるアラーム機能の付いたものも、利用者が増えています。

 

 日本では、オフィスワーカーをはじめとした、日常的に長時間座る習慣がある人を「座りっぱなし症候群」とも呼び、問題視され始めています。

 勤勉で真面目な文化は世界に誇れますが、それが原因で死亡率を高めるのは非常に残念です。

 ぜひ明日からと言わず今日から、30分ごとに軽いエクササイズを兼ねた休憩を取ることを意識しましょう。

 

 ちょっと変わった方法で恐縮です(^_^;)。

  

 落ち着きがない人の方が長生きできるのかもしれません(笑)。

 

                記事担当:エコノミークラス症候群要注意な坂本