群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です

回復期リハ病棟156床。ロボットリハ稼働中。100名超のリハスタッフで365日リハビリ邁進中。一緒にリハビリがんばりましょう。

「雪道で転びにくい歩き方を調べてみよう!」

相変わらずの寒さで身も心も冷える思いをしておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

当群馬リハビリテーション病院がある中之条町は朝7時半に-3℃前後の気温が続いております。

 

年明け1月ごろと言えば、雪がよく降る時期と思います。

昨年12月中~下旬にかけて日本海側を中心に大寒波が襲来していたのは記憶に新しいところです。

当院でもクリスマス期に彼方の山まで白む雪がしんしんと降っておりました。

 

雪が降ると心配なのは路面の凍結なのは全国共通でしょうか。

降った初日こそまだいいですが、人や車によってデコボコに踏み固められた雪が翌日カチコチに凍り、移動に大きな制限をかけてくるのはよく見る後傾と思います。

さらには、溶け果ててアスファルトがいつもの色に戻ったと思ったら凍っていた、ブラックアイスバーンのような事例も少なくはありません。

 

本稿では凍結路における転倒を引き起こしにくい歩行方法を、文献や先行研究を参考にしながら述べていきます。

凍結路における歩行では経験的に「すべりが起こらないように歩く」事を意識されるかと思います。

雪や凍結路を経験されたことのある人は俗に言う「ぺたぺた歩き」をイメージ出来ると思いますが、これはいわゆるペンギンのような「小さい歩幅で」「真上から地面を踏み」「足の裏全体で地面に着地する」歩行となります。

 

ところで、すべりとは床面に対して最大静止摩擦力を越える力が発生する事と同義と言えます。

言い換えれば、前後方向にかかる力が摩擦の限界値を超えたとき、すべる動きに変わるということです。

図では「とある物体」としていますが、人間の足でも同様で、足の接触面の摩擦よりも大きい力でつま先を蹴ると滑ってしまうというわけです。

これを踏まえて、すべらないように歩くためにはどうすれば良いでしょうか。

細かく述べれば、垂直方向の力が大きくなるよう真っ直ぐ地面を踏むようにしつつ、前後方向の力が小さくなるように静かに足を着いたり離したりして床面の摩擦力を越える力を出さない事が転がらないコツと言えます。

早い話が足全体でぺたぺた歩こうという話ですね。前述のペンギン歩きのとおりといえます。

もちろん、凍結路は全く平坦ではないし、踏み固められたでこぼこ氷のために着地も簡単では無いためこの限りでは無いです。あくまで凍結路での基礎となる歩き方と思って下さい。

 

 

さて、横串らの報告によれば、健常者における模擬凍結路での歩行は乾燥平坦路面と比較して、「立脚期が延長し」「(床反力計による)前後分力が平坦化し」「立脚期での膝関節・股関節の屈曲が増大し」「立脚期での股関節・膝関節伸展モーメントが増大した」という差が合ったようです。

股関節・膝関節の屈曲増大・伸展モーメントの増加に関しては確かにと納得出来る内容です。要するに膝を伸ばさず、重心が低い位置を保ちながら歩くわけですから、転倒したときのエネルギーも小さくなると考えられます。

また、垂直方向の力を減らさないように歩く工夫もされている事が伺えます。重心の高さを同じに保つ事で垂直方向の力が減らず、垂直抗力を高く保ったまま歩ける(静止摩擦力が高い状態を保つ)ようにしているわけですね。

この情報を踏まえれば、前述のぺたぺた歩きも人間の経験則から自然に編み出された手法かと思われます。

(なお、横串らはこの情報を踏まえ大腿義足の開発をしていたようです。)

 

凍結路と言っても一概に状況が固定出来ないものであるため、述べるときりの無い話にはなりますのでこの辺りで締めたいと思います。

これは完全に転倒を引き起こさない歩行ではないという事は承知して頂ければと思います。

歩いているのが自分だけであれば転倒も起きにくい歩き方とは言えますが、回りに人や障害物があればもちろんリスクは増大します。

状況によっては転倒が発生するという事を念頭に置きながら、回りの状況に合わせた安全な歩行を心掛けてください。

 

長文、失礼しました。

 

参考文献

横串ほか, 凍結路面に適した大腿義足の開発. 日本義肢装具学会誌, 17(2): 106-111, 2001

 

                              記事担当:OT大塚