温泉がしみる季節になりましたので、
今日は、以前にもお話しした、3万人の方々を20年間追跡した調査にもとづいた、浴槽入浴頻度と脳卒中や心血管疾患発症リスクとの関連のお話しをします。
入浴は、血行動態機能を改善することから心血管疾患予防効果があると言われますが、実際にはどうなのかという調査です。
浴槽への入浴頻度で病気の発症リスクを比べると、「週2回以下」の方と比べ、「ほぼ毎日入る」方では、脳卒中の発症リスクは26%低く、病型別にみると脳出血で46%、脳梗塞で23%の低下がみられました。
浴槽入浴頻度が「週2回以下」のグループと比較して、「ほとんど毎日」のグループは、心血管疾患に罹るリスクも28%低下していました。
うち虚血性心疾患(冠動脈疾患)リスクについては35%の低下を認めましたが、心筋梗塞や心臓突然死については、統計的に有意ではありませんでした。
浴槽入浴は、お湯につかることで、体温の上昇、心臓の収縮力や循環血液量の増加などを引き起こし、運動をするのと似た作用で循環器疾患の発症リスクを低下させた可能性があります。
また、浴槽への入浴を毎日継続して行えるということは、生活習慣がキチンとしていることの表れでもあり、生活習慣が乱れていては、毎日入浴するという習慣を維持していくことが難しいのではないかということもあります。
シャワー浴 vs バスタブ浴 - 群馬リハビリテーション病院(旧沢渡温泉病院)リハビリテーション部です
浴槽に毎日浸かるという日本人特有の習慣は、脳卒中や冠動脈疾患発症リスクを下げる効果も持っているようです。
「黙浴」
風呂の温度はぬるめでもなく、熱めでもなく、適温での入浴が脳卒中、心血管疾患の発症率が低かったという結果も出ています。
こういった話をすると、私はもうこの病気に罹ってしまったから、意味がないですねという方もいらっしゃいますが、再発を予防したり、別の疾患に罹りにくくしたり、悪化させたりしないようにするためにも、生活習慣や入浴は大事なことと言えます。
病気になってしまったからこそ、薬や睡眠、食事、生活習慣は大事にする必要があるのではないでしょうか。
Habitual tub bathing and risks of incident coronary heart disease and stroke.
Heart (British Cardiac Society). 2020 05;106(10);732-737. doi: 10.1136/heartjnl-2019-315752.
記事担当:部長さかもと