睡眠時間は少な過ぎても多過ぎても認知機能低下と関連するという報告が「Brain」に掲載されました。
初期段階のアルツハイマー病患者でも、適切な睡眠時間を確保することで、加齢に伴う認知機能低下のリスクを下げられる可能性があるとのことです。
アルツハイマー病は認知機能低下の主な原因で、認知症患者の7割を占めます。
睡眠不足はアルツハイマー病でもよく現れる症状で、病気の進行を促してしまう要因にもなっています。
この研究では、アルツハイマー病の試験に参加している人の中から100人を対象に、4年半追跡し、睡眠と認知機能の変化の関連を調べたそうです。
対象者の多くは認知障害がありませんでしたが、11人に非常に軽度の認知障害、1人には軽度認知障害を認めました。
睡眠時間と認知機能低下との間にはU字型の関係が認められ、自己申告による睡眠時間が5.5時間未満と7.5時間超の場合では、認知機能テストのスコアが低下していました。一方、睡眠時間が5.5時間以上7.5時間未満の時間だった人では、スコアの低下はなかったとのことです。
睡眠時間が短い人だけでなく長い人でも認知機能が低下している。このことは、認知機能低下の鍵を握っているのが、総睡眠時間ではなく睡眠の質である可能性を示しています。
また、「総睡眠時間には“スイートスポット”とでも呼ぶべき範囲があり、その範囲での睡眠を確保している人は、時間が経過しても認知機能が安定しています。
逆に、この範囲を逸脱している人では、認知機能の低下が認められました。原因は、睡眠時間の不足か睡眠の質が影響していると考えられます。
睡眠時間を改善する介入によって、認知機能を改善できるか否かはわからないとしていますが、環境を整えたり治療を受けたりすることで、睡眠不足が自覚されないようにすることは、健康的な生活をする上でも有益だろうと思います。
日本人の平均睡眠時間を見ると7時間40分程度で推移していますので、結構睡眠時間が長い人が多そうに感じますが、睡眠時間6時間未満の人の割合は、男性30~50歳代で4割、女性40~50歳代で半数程度です。(R1調査)
コロナ禍でも変わらず、同じ生活習慣が続いているのではないでしょうか。
寝過ぎ、寝なさ過ぎに私も注意したいと思います。
「過ぎたるは及ばざるがごとし」。こんな言葉を思い出しました。
記事担当:部長さかもと
引用文献
Lucey BP, et al. Brain. 2021;144:2852-2862.